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♪♪~♪~~♪~
昔はいた当時の彼と見た映画のメロディを口ずさんむ。
内容は確かベタな恋愛ものだった。
居酒屋からの帰り道、ほろ酔いな私は頼りない足取りで我が家へ向かっていた。
街灯のないこの道は、月明かりを頼りに歩くしかない。
しかし、アルコールが頭に回っているせいか私は空も飛べるのではないかという程、ご機嫌だ。
角の電柱を曲がれば、もうすぐ築32年のぼろアパートに到着。
口ずさむ歌もなんだか色々な歌が混ざり合い訳の分からないものになり始めたその時――、私は急に声をかけられた。
「おい、そこの酔っ払い」
「ん~?どちらさんれすかぁ~」
「いやそっちじゃない!コッチだ!コッチ!」
よくよく見ると私が話しかけていたのは電柱で、確かに話しかけてきたのとは違うだろう。だけど、辺りを見回しても人っ子一人いやしない。
――幻聴?
心なしか呂律も回っていない気がするし、自分で思っている酔っ払っているようだ。明日が休日だからと言って飲み過ぎたようだ。以後気を付けねば。
「聞いていんのか!?下だ、しぃた!」
下。足元。そこには真っ黒な猫。
そうそうコッチだ。という猫。私の記憶が正しければ猫はニャーとしか言わないし、私は猫語を理解しないはず。
目の前で起こるありえない事態に酔いは一気に醒めた。
「うそん。夢?………うん、夢見てんなこりゃ。私の本体早く起きてー」
「幻聴でも夢でもねぇよ」
「この歳になってこんなファンシーな夢を見るなんて……あぁそうか、昨日魔女の宅急便見たからだな、きっと。うん、そうだそうだ」
そう言いながら、腰を屈め猫に視線を合わせるようにして、お前さん名前は?なんて聞いてみる。
しかし、返事はない。
「おーい、ニャンコー?」
「お、お前、もしかして…!」
今まで足しか見えてなかった猫は私の顔を見て驚愕の表情……は、わからないがそんな声を上げた。
その猫は迷惑極まりない程でかい声で私名前を叫び、
「、は?」
「俺だッ!土方十四郎だ!」
更にはこんなことまで言ってのけた。
本当大した夢である。元カレが猫で?私のもとに現れた?
……大した夢。そう、壮大な夢だが私も一つだけ言わせて欲しい―――…
「ハァァアアア!?」
(頬っぺたをつねってみた)
(……痛かった)
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