ぼっちの生誕記念日

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夏休み終盤、8月28日の午前12時。俺、田中 彼方は17歳の誕生日を迎えた。 俺は今、木製のテーブルに置かれたチョコケーキ(ホール)を前に、フォークを片手に独りで『ハッピーバースデートゥーユー』を歌っていた。 誕生日を祝ってくれる人が身近にいないというのは、とても悲しいものだ。ケーキに刺さった蝋燭の明かりが哀愁感を引き立たせた。 誕生日というものは誰かに祝ってもらうから嬉しいのであって、自分で自分を祝うのはあまり嬉しいことではない。むしろ虚しい。 しかし、これは仕方のないことなのだ。まず、俺は独りにはあまりにも大きすぎるアパートの一室で独り暮らしをしているため、両親はここにはいない。 次に、俺には誕生日を祝ってくれる友達がいない。誕生日を祝う友達もいない。そもそも、友達がいない。 クラスではいつも独りで携帯電話を弄っているか、読書をしているかの、俗に言う『ぼっち』である俺は、友達がいなければ、夏休みの思い出もなかった。
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