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そして疑問があった。
“俺は本当に刺されたのだろうか?”
「まぁやっちゃったのはしょうがないからさ、取り敢えずは、彼に籍は空けとくよ。一応言っておくけど僕も悪いとは思ってる」
というが反省なんてことは全くしている気がしなかった。
寧ろ清々しく思える。
俺は男を真っ直ぐ見つめ、疑問をぶつけた。
「どういうことだよ。俺に何したかちゃんと説明しろよ。俺は刺されたんじゃねぇのかよ」このときばかりは、よろけていては格好がつかない。しっかり垂直に姿勢を伸ばした。
俺の問いに男はこっちに振り向く。
今まで話さなかった俺に、そいつは不思議そうに見つめた。
「神奈川ちゃんに聞いた方が早いかもよ」それだけ残し、入ってきた入り口に向かい、歩幅を大きく膝を伸ばして両方の足が地面に着かないようにし、両手は腰の下辺りで組みながら、陽気に歩き出した。
が、男はここから出ることは叶わなかった。
銃弾のような物が、一閃俺の頬を擦った。
だが銃弾が放たれたような銃声はしなかった。
確かに今俺の右頬に僅かに当たったのだ。血だって滴程度に出ている。
周りを見渡す。
先ほどの男が肩を庇いながら、弱々しく立っている。腕をだらんとぶら下げ、血が絶え間なく流れる。
「ぐうぅぅぅ」と威嚇するように呻き声は男から聞こえてくる。
目を見開き、憎悪に包まれたように俺と神奈川を交互に凝視し始める。
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