プロローグ

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必死に走って気づけば屋上に入るドアがあった。 半分記憶がない程って“相当あれ”だって自分でもわかる。 早く行かなきゃ、 ―――はやく? なんのために? 息継ぎもろくにしないまま、一年ほどしか経っていないに関わらず、不自然な錆び方をしたドアノブに手を掛けた。 体が勝手に動くっていうか、気持ち悪い感覚。 そして 『俺なんでここに来たんだ?』 そんな疑問すら湧いている状況だった。 ギギィ、と古びた金属が擦れる音がして“開いた” ―――開いた? 立ち入り禁止の文字も書いてあった。 なのに開いた? 中に入ることを躊躇していた数秒を無駄に思い、黒くくすんだ床を強く踏み込み、扉を開いていく。 屋上入るとそこには、“彼女”がひっそりと隅で座っていた。下を向いた虚ろな目で。 寂しさを感じさせた。 周りには誰もいない。誘拐を犯した風貌の人物はいない。 それどころか、“人すらいなかった”。 そう思った途端、ハッとする。 今俺は“彼女を人として認識しなかった”のか? 頭が痛くなってきた。そこにいるのは正真正銘のクラスメイトの 神奈川陽射(カナガワヒザシ)であった。
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