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そして、再び違和感を感じた。今度は“肉体的な意味”の方で。
心臓の辺りを一刺され、体の中を抉るような、駆け回るような違和感。
刺された? そんなことすら考えられない一秒も満たない長い時間。
その長い一秒を終えた末―――
「ああ、あああ゛あ゛ぁぁぁああああ゛あ゛!!」
冷たい感覚に気付いた。普段ならば、あり得ない体内からの感覚だった。
つまりは、刺された?刺されたのか?
その疑問に辿り着いた時、俺は異常に気づく。
“何処も痛くないという異常に”。
確かに刺された。いや刺されたはず。
何ごともなく、身体は断じて正常だ。
だが、その事実を確認してしまうのが怖い。
何より、死んでしまう、という事を確かめることに苦悩する。
そして、視界がゆっくりと倒れるのを見た。
三半規管が狂いだして俺の均衡感覚をぐちゃぐちゃにされる。
次の瞬間には、頬を鈍器で殴られるような痛みと、生温い地面の温度が押し寄せる。
体は完全に重力に負け、コンクリートの温度が末梢神経を通じ伝わってくる。
地面にひれ伏しながら、視線を延ばすと神奈川が唖然とする顔が見えた。
「ゼンマイは、君の感じているコンクリートの温度ほど、生温いもんじゃないですよ、なんて―――」
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