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ジョークを言ったのか、聞き覚えのない男の声がクスッと鼻で笑ったのが分かった。
が、頭上から声が聞こえるが、その姿を確認することはできなかった。
俺は、声の主であろうそいつに地面へ後頭部を鷲掴みに地面へ押さえ付けられ、動けなくなっている。
助けに来たはずの神奈川に、救いを求めようとして必死に目を向けた。
格好悪いことは承知だった。
だが、異変があった。
「ぜん……まい?」
言った言葉は、ゼンマイ。
神奈川のか細い左腕には、ゼンマイが付いていた。
さっきまで無かったはずの物。
それは動くことなく、ただ腕に付いているだけの飾りにしか見えない。
ただ、そこから異様な感じがしただけであった。
「つまらないじゃないか。君から態々神奈川ちゃん通して頼んでくれたのに、しかも特別にボクが出向いたんだぜ? 分からないと思うけど、それって結構特別な体験って事を実感しな。これでスタートが相当違うねきっと―――」
男は俺を依然押さえ付けながら、会話(一方的だが)中に時折「うんうん」と頷き言う。
俺に頼まれたって何だ? それに、こいつ刺す以外に俺に何かしたか? これをやるように言ったのは、神奈川なのか?
座っていた神奈川は、さっと艶のある黒髪を揺らし立ち上がる。
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