第一夜

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「よぉ、久しぶりだな旬。」 切れ長の目を細ませて片手をあげた、男前。 クッと片方の口角を上げて笑うそれが酷く似合うその人は玖坂組・組長 玖坂誠司(セイジ)。 その横には艶やかな黒髪を結い上げ微笑みを浮かべる和風美人。 誠司さんの妻の玖坂 菖蒲(アヤメ)。 つまるところ、静流の両親だ。 並んで座る二人の前には着流し姿の和唆、こと父親。 その横に麗さんが座った事で互いの両親が揃ったわけだが、俺は知っている。 このメンツはロクなことがない。 「まぁ二人とも座りなさいな。」 にっこり楽しげな声色の菖蒲さん。 「さて、率直に用件を言うが旬、静流と紫乃原に行って欲しい。」 本当にロクなことがない。 たっぷり一拍おいて、ため息をつく。 つまり最初から選択肢なんてのは存在しなかったわけだ。 静流の妙な余裕はコレか…。 仕事の依頼としてではなく、“ お願い”として持ってくるあたりタチが悪い。 「…はいよ。」 頷くしかないじゃないか。 俺以外の五人が顔を見合わせニヤリと笑う。 菖蒲さんと麗さんに至ってはハイタッチまで交わしていた。 「随分と聞き分けがいいじゃねぇか。 物分りの良さも健在だな。」 深い笑みを浮かべる誠司さんは相変わらずというか、滲みでる大人の色気やらなんやらとハスキーボイスがセクシーさに磨きを掛けている。
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