闇黒

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彼は絶句した。 なんてことだ。ここにはこんな化け物がいるのか。 また絶望の底に突き落とされた気がした。 「わんわん」 しかし、この犬はただ鳴いているだけで襲ってもこないし、取って喰おうともしない。 もしかしたら、実はいい奴なのかもしれないと、彼はふっと考えた。 ーーいや待て、もしかしたら油断させた後にガブリということも……。   「オルトロス! 勝手に出歩くなと言っているだろう」 どこからともなく男性の声がした。 低く、落ち着きのある声。 すると犬は嬉しそうに尻尾をぶんぶん振り始めた。 オルトロスとはこの犬の名前だろうか。 「それと、根岸修斗。もう時間だ」 自分の名前を言われ、彼はとっさに声の主を探す。 しかし、“それ”は自分からこちらに向かってきた。
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