闇黒

2/5
前へ
/61ページ
次へ
軽い。 足の指を動かしても、膝を曲げてみても、少しも痛みは感じられない。 気づけばサイレンも、人の声も聞こえない。 ーー無音。 どうなってるんだ。 修斗はがばっと体を起こし、辺りを見回す。 ーー闇。 辺り一面の、黒。 まるで白いキャンパスを、墨で塗りつぶしたかのよう。 人っ子一人見当たらない。 人を呼んでみようと、彼は立ち上がった。 声は出るようになっていた。 「誰かいませんか」 返事はなかった。 修斗はゆっくりと歩き始めた。 当てがあるわけではない。 ただ、人を見つけたかったから。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加