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ベッドに横たわり、天井の木目をぼんやりと眺めていると、机の上で突然携帯電話が鳴り出した。
僕はゆっくりと立ち上がり、机の前まで行き、携帯電話を手に取った。
クラスメイトである島田信一の名前がディスプレイに表示されている。
島田はひょうきんな男で、クラスのムードメイカー的存在ではあるのだが、勉強というものにはどこまでも向いていないらしく、成績も学年の最下位辺りをさ迷っている。
おそらく、この夏休みも遊び呆けているに違いない。
そんな島田からの電話だ、どうせ遊びの誘いに違いない、僕はそう思いながら通話ボタンを押し、電話を耳に当てた。
「もしもし」
僕が電話に応答すると、島田の声が勢いよく僕の耳に飛び込んできた。
「よう、五十嵐。お前、いま何をしてた?」
「何もしていないよ。ベッドの上でゴロゴロとしていただけさ」
「ということは、暇なんだな?」
島田は何かを企んでいるかのように言った。
電話を握りしめてニヤリと笑う島田の顔が、僕の頭の中に描き出された。
正直に言えば暇な訳ではなく、涼しくなりさえすれば僕は勉強をしたいのだ。
だが、僕の口はそんな意思をまるで無視するかのように、「うん」と答えていた。
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