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笑顔5
朝からやたら蝉がうるさく鳴いている。
夏と言えど朝のうちは涼しいなどというのはもはや昔の話で、ここ数年、夏は朝方から十分暑い。
学校はすでに夏休みに入っている。
高校三年生の僕たちにとって、この夏は大学受験における天王山とも言える時期だ。
おそらく、本気で大学を目指している同級生達は必死に勉強していることだろう。
もっとも、僕だって真剣に大学受験を考えている。
できることであれば国立大学に合格したい、僕はそう思ってこれまで勉強してきた。
おかげで、成績はそこそこの水準を維持することができていた。
おそらく、この夏に力を上積みすることができれば、希望する大学に合格することは夢でないだろう。
しかし、僕はいま勉強できずにいた。
この茹だるような暑さのせいだ。
エアーコンディショナーの電源さえ入れればその問題は容易に解決されるのだろうが、僕の父はそうすることを嫌う。
地球温暖化対策だとかなんとか言ってはいるが、実のところは電気代を少しでも削減したいといったところだろうか。
とにかく僕はいま、少しでもこの暑さを凌ぐための何かを探している。
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