守りたいもの

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今敷地内にあるのは赤の死体と虫の息の人間、収容された怪我人、そして防衛班と衛生班。 分かりやすく言い換えよう。 そこにあるのは魔物をベースに作られた赤の血と肉片、そして生きた人間。 魔導鬼の作製方法を知る王国の人間は本当に一握りのみ。 故に知らない。 故に退却の言葉に混乱するだけ。 故に、絶望を知ることになる。 「がああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 展開された魔法陣の内側にいてしまった人間たちからあがる悲鳴。 そして周囲の血も反応し、一瞬の鈍い発光と共に生まれる新しい魔導鬼たち。 「・・・・・・・・・え?」 偶然にも魔法陣の隙間にいた人間の目の前に立つ赤。 施設内の人間を犠牲にして生まれたそれはすぐに目前の命を絶った。 「ユウ!!」 一瞬で反転したこの戦況で、騎士団長の言葉でユウの腕を掴んでいたヒュージは2人とも偶然、魔法陣の外にいた。 呆然とするユウに襲いかかる赤の腕をユウを引っ張り、爆砕を盾にして防ぐ。 「ガハッ!」 斧、鎧そして腕が壊れていく音を聞きながらヒュージは吹き飛ばされた。 「ヒュージくん!!」 現実に引き戻されたユウはすぐに身体強化をかけてヒュージを追った。 言うまでもなく赤もすぐにユウを追う。 このままではユウがまずい。 そう判断したヒュージは近くに転がっていた爆砕の刃を無事な腕で掴み、激痛の走る体に鞭を打って全力で地面を蹴った。 「伏せろユウ!!」 今の限界まで身体強化を施して力の限り刃を握る。 刃が手に刺さるが、気にせずに体に反動をつけて更に加速を試みる。 ユウを守る。 ただそれだけを思った。 「うおおおおぉぉぉぉ!!」 自分を鼓舞するが如く吠えながら、顔を上げる。 そして、ユウは赤の腕に貫かれた。
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