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帝国兵の剣と鎧を爆砕で砕きながらも、もう彼の目には躊躇などない。
以前に王国内の待機場でアリアたちが作り出した死体に吐いたから慣れた、そんな理由ではない。
後ろにいるユウたちを守りたいからでもない。
ただ自分の身を守るだけで精一杯なだけである。
そんな彼の脳裏をよぎるのは学園でのシュウとミュトスの戦う姿。
守りながらもそれを感じさせない戦いは忘れることが出来ない。
ここに着任してから分かるあの2人の異常性。
守りたいものを守れる絶対的守護力こそがヒュージの目指す理想像。
少しでも余裕が持てたのならばすぐにでも守る対象を自分から周りへと変えるのが今の目標である。
「ふぅ」
無事に仕事を終えたヒュージは地面に爆砕を突き立てると腰を下ろした。
同じ様に経験をあまり持たない者たちも気を緩める。
いつもならばベテラン組の確認後、帰投になるのだが、一向に警戒が解けない。
不思議に思い始めるのと同時に全員の頭に念話が響いた。
『帝国戦力を確認!魔道鬼赤50、青10!』
「なっ??」
思わず声をあげたのはベテラン組の数人。
他の者たちも焦りを見せるが、それとは比べものにならないものであった。
違いはただ1つ、魔道鬼との戦闘経験があるかないか。
「ガキ共はすぐに帰投しろ!呼ばれた奴だけ付いて来い!」
そこからの動きは早かった。
他のグループとの編成をあっという間に終わらせると身体強化をかけた上で目的地へと走り出した。
「話はよく聞きますが、そんなに危ないとのなんですか?」
「俺も聞いた話だが、大抵の人たちは可能ならば戦闘を避けたいと口を揃えているそうだ」
先導する中堅の人に学生が話を聞いているが、ヒュージは嫌な予感しかしていなかった。
黒の部隊は帰ったが、第3騎士団もいるからどうにかなる事は分かるのだが、どうにも落ち着かないのである。
補給地に到着すると、衛生班は既に戦闘体制は整えており、ヒュージたちはトラップの設置や防衛体制の確認を始めた。
「ヒュージくん!大丈夫ですか??」
確認を終えて負傷者収容施設に入ると、ユウが心配そうに駆け寄ってきた。
「大丈夫だ、心配することはない」
ヒュージのその言葉は気が付かないうちにユウに向けてではなく、自分に言い聞かせるものになっていた。
すぐにそれに気づいたユウはヒュージの手を握る。
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