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「あぁ……あの人影はなんだったんだ?」
「あれはね、実像なの」
「え?」
「実像は焦点距離の二倍にできるでしょ?窓ガラスをスクリーンに見立てて、反対のビルのてすりに鏡を立てて、人形を鏡の前で動かしたのよ」
将希にはなんのことやらさっぱりわからない。
だがわからないのも悔しかったので、わかったふりをして頷いた。
「……変なメールや写真を送ったのは…?」
「それは全部、麗香ががやってくれたの」
花枝は伊豆にきて麗香へ吊り橋の写真を転送し、麗香が後ろから薫と将希が二人で歩いている写真を送ったらしい。
「暗闇の中のきもちわるい感触も麗香か?」
「ええ、アイデアを考えたのは薫。ちなみにあれ、お化け屋敷の定番だけど蒟蒻なのよ。」
まるでいたづら好きな少女のように薫と花枝は顔を見合わせて笑った。
「裏切られた…」
ぼそりと将希はこぼした。二人を裏切ったのは将希なのだが…。
すると…
「なに言ってんの!一番の裏切りものは将希でしょ!ちょっとは反省したらどうなの!?」
「そうだ!ふざけんなよ!!なに被害者ぶってんの?!」
薫と花枝はそれぞれ怒りを爆発させた。
バシィッ
バシィッ
右と左に渾身の平手打ちをくらった。
将希の両頬は赤く腫れ上がる。
「だいっきらい!!もう顔も見たくないわ」
薫はピシャリと冷たい言葉を投げつけると花枝の腕を組み、走り出す。
どんどん遠ざかるかつての恋人たち。
将希はただ立ち尽くすことしかできなかった。
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