入学式

10/22

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
なんだかんだでようやく校歌という曲が終わった。 「みんなサンキュー!!」 ボーカルがそんなようなことを言っていたが、もう何も気にしないようにしようと思った。 テンション上がりすぎてもはや何を言ってるかよくわからないのも気にしない。 校歌なのにサンキューとかライブかよ!と思っても気にしない。 校歌バンドが片付けをすごいスピードでやり、2分足らずで綺麗に元通りになった。 何事もなかったように片付け終わった舞台を確認して、先生は次のプログラムに進んだ。 「新入生氏名読み上げ!」 そういうと体育館の端の方に並んだ教職員席から何人かが立ち上がった。 1番前の筋肉隆々のいかにも体育教師だと思わせる先生が壇上へと上がった。 おもむろに壇上に置いてあるマイクをいじり、一息ついてから先生は声を発する。 あれはおそらくマイク使わないな。 なんて軽く考えた私だったが、その声は想像していたものをはるかに超えるものだった。 「1年1組担任の高木です!担当教科は体育をやらせていただく!では、氏名読み上げさせていただきます!」 高木と名乗る先生はこの広い体育館で本当にマイクを使わず、実に野太い声で響かせるように読み上げを始めた。 そりゃもうガキ大将なんて目にもないくらいの大きな声で。 「1組の人は可哀想だわ。高木先生はとても暑苦しい人だからクラスも熱気だらけだよきっと」 「そ、そうなんだ、、、」 呼ばれていく名前を聞きながら余計なお世話と思いつつ、私はなぜか一人一人に幸運を祈る様に手を合わせていた。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加