2人が本棚に入れています
本棚に追加
大嫌いだったビールを飲むようになったのは朋哉のせい。
二人で飲むときも、いつもビールを飲むもんだから、自然とビールの味に舌が慣れてしまう。
この苦い炭酸水の何が美味しいのだろう、と昔は首を傾げていたのに、あの人に変えられてしまった。
駄目、皆といると昔を思い出して感傷的になってしまう。
一体何年前のことを思い出してるんだ、あたしは!
ばつが悪くなって、目の前の祐輔のハイボールを飲み干してやった。
あー…と残念そうにハイボールの行方を追う祐輔。
完全なとばっちりで八つ当たり。
「ごめん、おいしかった!」
「自分の酒がないからって…で、次何飲む?」
ぶつぶつ文句を言いながら祐輔はメニューを開いた。
隣の紗智がワイン飲みたい!と言ったので、あたしも便乗した。
祐輔は雪奈と熊と熱燗を頼んでいた。
なんだかんだ、皆はあたしがくる前に飲んでたようで、ペースダウンしているようだった。
「葵、なんで今日遅かったの?」
紗智が箸でサラダをつつきながら聞いてきた。
「あーうん、ちょっと…」
「あ、中谷さん?」
ナカヤサン、という聞き慣れない固有名詞に、雪奈も熊も祐輔も反応した。
誰?と雪奈がその美しい口角を思いっきり上げて食いつく。
ちょ、そんな食い気味で来ないで…!
最初のコメントを投稿しよう!