追憶

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大嫌いだったビールを飲むようになったのは朋哉のせい。 二人で飲むときも、いつもビールを飲むもんだから、自然とビールの味に舌が慣れてしまう。 この苦い炭酸水の何が美味しいのだろう、と昔は首を傾げていたのに、あの人に変えられてしまった。 駄目、皆といると昔を思い出して感傷的になってしまう。 一体何年前のことを思い出してるんだ、あたしは! ばつが悪くなって、目の前の祐輔のハイボールを飲み干してやった。 あー…と残念そうにハイボールの行方を追う祐輔。 完全なとばっちりで八つ当たり。 「ごめん、おいしかった!」 「自分の酒がないからって…で、次何飲む?」 ぶつぶつ文句を言いながら祐輔はメニューを開いた。 隣の紗智がワイン飲みたい!と言ったので、あたしも便乗した。 祐輔は雪奈と熊と熱燗を頼んでいた。 なんだかんだ、皆はあたしがくる前に飲んでたようで、ペースダウンしているようだった。 「葵、なんで今日遅かったの?」 紗智が箸でサラダをつつきながら聞いてきた。 「あーうん、ちょっと…」 「あ、中谷さん?」 ナカヤサン、という聞き慣れない固有名詞に、雪奈も熊も祐輔も反応した。 誰?と雪奈がその美しい口角を思いっきり上げて食いつく。 ちょ、そんな食い気味で来ないで…!
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