追憶

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「中谷蒼吾さん。葵の彼氏だよねー」 紗智はきゃっと可愛くウィンクした。 「か、彼氏じゃないよ!」 中谷さんは飲み会で知り合った人で、何度か2人で食事をしたが、付き合っているわけではない。 彼からの好意は感じているが、今のところ特に何か言われたわけではない。 「なぁに、葵!しっかり前進んでんじゃん!」 雪奈が嬉しそうに笑ったところで頼んでいたワインと熱燗がきた。 祐輔と熊もにやにや笑ってあたしを見ていて、紗智までもが微笑ましいと言わんばかりの笑みを湛えていた。 「だから、違うってば…っ」 「いやーでも俺嬉しいわ」 熱燗をくいっと口に入れた祐輔が幸せそうに笑っている。 そんな祐輔のお猪口に新しくお酒をつぐ熊もうんうん、と頷いている。 「この世の終わりみたいな顔だったもんな」 「そうそう!手がつけられないくらい落ち込んでたし」 彼らが言ってるのは、あたしが朋哉と別れたときのことだ。 今でも覚えてる、あのまさにこの世の終わりだと感じた、あの暑い日を。 あたしはきっと、 きっと一生忘れない。
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