切望

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改札をくぐると、紗智が熊に何かを伝えていた。 神妙な面持ちで聞いていた熊が、急にくしゃっと笑って紗智の頭を撫でていた。 あたしの位置からは見えないけど、耳の赤くなった紗智が、恥ずかしそうに悲鳴を上げていた。 そして、熊の右足に蹴りを入れ、痛がっている熊を尻目に改札をくぐってくる。 「な、何?」 「何でもないの!行こ!」 真っ赤になった紗智はホームにずんずん歩いていく。 熊は足を擦りながら、あたしに向かって手を振った。 煙草をくわえながら駅を去る熊は、やっぱり格好良いよなーと見とれてしまった。 ホームに歩いていくと、むすっとした紗智が両腕を胸で組んで待っていた。 「義仁のやつ、ホントむかつく!」 「何?より戻そうとか言われた?」 そうだったらいいな、という期待を込めて、怒る紗智が可愛いからからかってやるつもりだったんだけど。 なかなか紗智から返事はかえってこない。 おかしいな、と思って紗智の顔を見てみると…
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