切望

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「もしもし?ごめん、今大丈夫?」 『あぁ、平気』 熊は少しだけ眠そうな声をしていたが、あたしの話に付き合ってくれるようだ。 「紗智、幸せにしてね」 『わかってるよ。もう泣かせねぇ』 その言葉にほっとし、本題を切り出した。 「ねぇ…もしかして、二人がより戻したきっかけって、朋哉、とか?」 電話の向こうで熊が息をのむのが分かった。 皆があたしに話したくない理由、それはきっと、十九八九朋哉のことだ。 皆に会って、昔のことを思い出したせいか、あたしは朋哉に執着しているようだった。 昔はここまで露骨に隠されたりしなかったのに、何? 皆が朋哉の名前すら出さないようにしている理由は、? 『…葵』 数分の沈黙の後、熊がゆっくりと話し出した。 『さっきの質問、やっぱ思い出して、答えて』 今度はあたしが息をのんだ。 さっきの質問、朋哉がいなくて、残念だったのか、安心したのかーー 「あたしは…朋哉と別れて、ずっと忘れようと必死だった。それでもどこかで朋哉の影は追ってた。でもね、朋哉が全て、なんてそんな大袈裟なこと言わない」 あたしは、自分の喉が熱くなるのを感じた。 鼻の奥がつんとする、涙を、流したいんじゃないの。 「実際、最近はずっと朋哉のこと思い出す日はなかった。…今日だって、もし朋哉がいたら笑って話す自信もあったんだよ?…でも、やっぱり駄目だった、朋哉がいないあの場所は、寂しかった」 残念とか、安心したとか、多分そんな感情じゃなかったの。 あたし、 あたしね、 「トモに、会いたい」
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