追憶

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じりじりと太陽が肌を焼く。 あぁ暑い、手の甲で額を拭うと一滴の汗が地面に染みを作った。 今日もきっと1日こんな気候だと思うとうんざりする。 「あつ…」 夏は、嫌いだ。 地下鉄までの道を急ぐ群衆に隠れ、ひとつため息をついた。 アスファルトから湯気がたちこめた気がして、一瞬思い出すあの日の景色。 馬鹿な、もう5年も前だと言うのに。 思いだし掛けたあいつの面影を振り払うように、急いで頭を振る。 今日も仕事だ。 今日こそ早く帰れるといいな。
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