懐古

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「…入らないなら毎日来られても迷惑なんだけど」 紗智ちゃんの奥から、小さく呟く声が聞こえた。 亜弥子さん、ひとつ上のマネージャーさんだ。 「亜弥子さん怖ー…葵、気にしないでね、亜弥子さん、朋哉のこと気に入ってるからさー」 紗智ちゃんがあたしに言った。 ちらりと彼女を見ると、もう笑いながらフィールドに声援を送っている。 さすがに、その通りだと思った。 こんな中途半端なやつがいても、周りに迷惑なのは当たり前。 確かに、サークルに顔を出すようになってから、楽しいことが増えた。 まず知り合わないであろう人たちとも仲良くなれた。 この半年、充実していたことに変わりはない。 けれどこれから先、勉強が忙しくなるに連れて、今とは違った迷惑をかけるのは目に見えていた。 あたし自身が決めた、大学での目的は勉強なんだから。 この辺が潮時だろう。
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