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「あのね、あたしこれ以上サークルに顔出すのやめようと思うんだ」
「え?」
日が暮れて、構内が暗闇に包まれる。
隣を歩く朋哉くんが、少し目を見開いてあたしを見つめた。
「だって、入りもしないのにこんな、さ。皆にも迷惑だし」
「…」
きっと、このままでいられないって、朋哉くんも気づいてたんだと思う。
彼は黙ったまま、歩くスピードを遅めた。
あたしもつられてゆっくり歩く。
「…朋哉くんのチーム勝ってたね。おいしいお酒飲めるじゃん」
「…なぁ、葵。本当にもう来ない気?」
重たい雰囲気が嫌で、せっかく話題を逸らしたのに、あっさり朋哉くんに戻されてしまう。
「だってさ、お前、せっかく最近ちゃんと笑うようになったのに」
「え…?」
「…初めて会ったときのこと覚えてる?テラスでさ、お前ものっすごいつまんなそーに飯食っててさ」
彼は思い出したのか、声を殺して笑いだした。
「一緒にいる子はこっち楽しそうに見てるのに、お前はこっちなんて見もしないでつまんないって顔に書いてあった。せっかく大学楽しいのにもったいねーなーって」
「…」
「そしたらふとさ、あいつ笑わしたら面白いんじゃね?って思ったんだよなー何故か(笑)」
面白い、であんな強引なことしたのか、この男は。
朋哉くんはひとしきり笑った後、あたしに向き直って微笑んだ。
「俺が楽しいことに、お前巻き込んで悪かったよ。でも、葵はそれでいいの?」
ぽん、と頭に手を乗せられる。
「せっかく、あんなに楽しそうなのに。俺は、お前が笑ってる顔、もっと見たいけどな」
ずるい。
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