僕らの傷痕[BL]

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そう思ったら僕は自分でも気付かないうちに電話を鳴らしていた。 ハッと我にかえったとき、授業中だったらどうしよう、とかそんな不安が頭に過ぎる。 でも一声だけでも聞きたくてコール音を聞き続けた。 結局、秋影さんは電話には出てくれなくて、一人で自室に篭るのが嫌だった僕は暗くなりかけた外をあてもなく歩いていた。 僕の家は両親共働きで、しかもどちらも子供に無関心ときたものだから昔から家にいても寂しいだけだった。 だからといって外に出ても仲の良い親子なんかを見て虚しさを募らせるだけだった。 僕が5歳くらいのとき、夕方一人で公園で遊んでいたら声を掛けてきた人がいた。それが秋影さんや春陽のおかあさん。 『ねぇ、今一人なの?』 『‥…』 『大人の人は一緒じゃないの?』 『‥おしごとで、いない』 『あら。もう暗くなるから危ないわよ?お家に帰らないと』 いやいや、と首を振る僕に困った顔を向けたおばさんは絶対ここにいてね。といってどこかに行ってしまった。 再び一人になった僕は置いてかれた気分になって泣き出してしまった。 誰かに相手されるのが凄く嬉しかった。だからすぐに背中を向けられたのが悲しかった。 けれどそのあと直ぐに秋影さんを連れたおばさんが僕を抱きしめてあやしてくれた。 寂しくなっちゃったね、ごめんね、って。 お母さんって、こういう人の事を言うんじゃないかなって思ったのを覚えてる。 それから、一人じゃ危ないから、と公園で遊ぶときは秋影さんと行くようになった。そして春陽も混ざって3人で遊んだ。 懐かしいなあ。 多分、僕の初恋の人はおばさんだ。 そして、今、好きなのは―――… .
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