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取り敢えず落ち着かなければ、と自販機で買ったコーヒーを道端に座り込んでズズッとすすった。
苦みが口の中に広がって頭が少し冴えてくる感じがした。
ふー、と長く息を吐いて目をつぶった。
家から、出なければ良かった。
そうすればわざわざ秋影さんのデート現場に遭遇することもなかったのに。
春陽のことで少し混乱していた頭が更に訳分からなくなりそうだ。
(それにしても‥綺麗な人だったなぁ)
まだ心臓はバクバクしてる。落ち着かない。
今日は家に帰りたくない。明日は学校休みだし、朝までフラフラしていようかな…。
秋影さんの慌てた赤い顔。クスクス笑った女の人。
春陽の冷たい無表情。横たわった動かない男の子。
コンクリートの地面がじわじわと僕の体温を奪っていく。
おかしいな、今朝はとても良いスタートだったのに。家に帰りたくない。あそこはこのコンクリートの地面よりも更に冷たい。
頭を膝に乗せて小さくなっていると背中に物凄い衝撃と響く怒号。
蹴っ飛ばされて僕は両手を前に出して地面に滑り込んだ。
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