僕らの傷痕[BL]

11/21
前へ
/103ページ
次へ
取り敢えず落ち着かなければ、と自販機で買ったコーヒーを道端に座り込んでズズッとすすった。 苦みが口の中に広がって頭が少し冴えてくる感じがした。 ふー、と長く息を吐いて目をつぶった。 家から、出なければ良かった。 そうすればわざわざ秋影さんのデート現場に遭遇することもなかったのに。 春陽のことで少し混乱していた頭が更に訳分からなくなりそうだ。 (それにしても‥綺麗な人だったなぁ) まだ心臓はバクバクしてる。落ち着かない。 今日は家に帰りたくない。明日は学校休みだし、朝までフラフラしていようかな…。 秋影さんの慌てた赤い顔。クスクス笑った女の人。 春陽の冷たい無表情。横たわった動かない男の子。 コンクリートの地面がじわじわと僕の体温を奪っていく。 おかしいな、今朝はとても良いスタートだったのに。家に帰りたくない。あそこはこのコンクリートの地面よりも更に冷たい。 頭を膝に乗せて小さくなっていると背中に物凄い衝撃と響く怒号。 蹴っ飛ばされて僕は両手を前に出して地面に滑り込んだ。 .
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加