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「ってぇなー!!このクソガキっ!」
仲間に笑われながら僕を蹴っ飛ばした人は膝を叩いた。きっと気付かずにぶつかってしまい転倒してしまったんだろう。
「…っごめんなさ」
「あぁ?聞こえねぇよ」
今だ地面に膝を着いたままの僕の目の前まで来て凄んだ男は汚れた靴の爪先で僕の頬を突いた。
汚い…。でも怖いから文句なんて言えない。
周りはやいのやいのと僕らを見て笑ってる。恥ずかしいぞ、とかお前が鈍臭ぇから、とか言われてる。
「こんなとこで丸くなってんじゃねえよ、恥かかせやがって」
「ご、ごめんなさい‥」
「許してやるから殴らせろ」
次の瞬間には僕の体は吹っ飛んでて建物の壁に叩き着けられてた。勢いよくぶつかったせいで息が詰まった。ていうかこれ、キックじゃん。殴ってないじゃん。
「うわ、飛んだねー」
「子供相手に大人げねぇな」
「お前まじで外道だな」
噎せながら口々に言う集団の方を眺めていたら一人が「あ。」と言ってこちらに近づいて来た。
わー、今日は本当に災難だ。また殴られるのだろうか。
「お前、今日覗きしてた奴だろ」
思わず目を見開いてしまった。
階段で声を掛けてきた奴だ。顔は分からないけど声は、こんな低くて眠くなるような感じだった。
絶対殴られる。逃げなきゃ、そう思うのに身体は思うように動いてくれない。
無表情で人を蹴る春陽の顔が思い浮かんだ。
少なくともさっきの男は羞恥と憎悪でいっぱいの顔をしていた。
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