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暴力を振るうとき、人はどんな顔をするんだろう、気になったのはほんの一瞬。なぜならその答えは直ぐに出たから。
前髪を掴み上げて僕と目線を合わせるその男はいやに綺麗な顔をしていた。楽しそうに歪めた口元が無駄に恐怖心を煽る。
「お前、いい子そうだからなぁ。ちゃんと口止めしとかなきゃな?」
目を細めた後に拳が持ち上げられて、痛みに耐えるべく目を固く閉じたとき、聞き覚えのある声がその場に響いた。
「お前らこんな所で騒いでんじゃねぇよ」
野次を飛ばしてた連中はしん、と静まり返り、また、わっと盛り上がった。
「ハルさん!」
「久しぶりっすね!」
「元気にしてたか?」
「また暴れようぜ!」
ボサボサの黒髪を掻きながら盛り上がる周りを諌めてこちらに近付いてくる。
細くて長い足が無理矢理持ち上げられた視界に入ってくる。
「っはる、ひ…」
僕の姿を確認した春陽は驚いたように目を真ん丸くした。
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