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「なんて、冗談ですよ」
大和が柔らかく笑う。その顔にも言葉にも不気味な雰囲気は感じられない。
悠一は呆然と立ち尽くし、ただ大和を見つめていた。
「楽しんでいただけましたか、オカルト研究部が考えたストーリーは?」
「……か、考えた、ストーリー?」
「はい。僕が中山俊喜だという、参加者に怖がって頂くために皆で必死に考えたストーリーですよ。あ、岸中大和というのは偽名ですよ。中山俊喜のアナグラムです。簡単なものですから、きっとお気付きでしょう」
悠一は体から全ての力が抜けたかのように弱々しくしゃがみこんでフェンスに寄りかかる。それを見る彼の笑みは満足気だ。
「……あーもー、勘弁してくださいよ」
悠一が振り絞るようにつぶやく。恐怖を乗り越えたからか、その顔には自嘲のような笑みが浮かんでいる。
「ああ、でも中山俊喜の件は実話ですよ」
全く、不謹慎だ。まあ僕は気にしないが。
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