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昨日までの看護婦さんたちは、日ごとに容態が回復していく僕を元気づけてくれた。
「このままずっと入院していてもいいなあ」
「馬鹿なこと言わないで、とっとと退院しちゃって下さいよ」
なんて、そんな軽口を交わすようになって来た頃
いよいよ退院の日取りが近付いてきたようで、僕は病室を移る事になった。
「ほんの繋ぎだから」
そう言われて通された病室は、どこかおかしかった。
ベッドがあって、
ナースコールボタンがあって……
それは普通の病室となんら違いはない。
でも、窓がなかった。
まるで霊安室のようだ。
僕はきょろきょろと室内を見回しつつ、
あと僅かの間だけ過ごすベッドに潜り込んだ。
「具合どうですか?」
担当の看護婦さんが優しく微笑みかける。
ただ、なにかソワソワしているようにも見えた。
「だいぶ調子いいです。でも、この病室変わってますね。なんで窓が無いんですか?」
彼女の顔から血の気が引く。
「えっ?窓、見えませんか?」
看護婦さんの表情が憐れみを含んだものに変わっている。
通りがかった医師を呼び止め、ヒソヒソと言葉を交わす。
「あの、なにか……」
「大丈夫。大丈夫ですよ。」
看護婦さんはそう言って、病室のドアを閉めた。
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