バケーション

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 玄関チャイムを押したのは、千佳さんだった。  さっきオレと一緒に面接受けた男の子を連れて、玄関先で話をしてる。  おっさんは、こっちを振り向くと 『お前は服を着なさい』  玄関ドアぐらい閉めて欲しいよな。  中腰のまま、股間をバスタオルで隠し、いそいそと脱衣場へ行き、服を着る。  洗面の鏡の中のオレと眼が合う 『バーカ』  オレが言ったのやら、向こうから言われたのやら。  着替えが終わり、髪を整えて脱衣場を出ると、まだ二人は立ち話してる。  オレ待ち?  おそるおそる話し掛ける。 『あの……で、オレ、どうすれば』 『千佳にお願いしてありますから』  千佳さんが、こっちを覗き込む 『うん。じゃ行こうか』  ……初っぱなからですか?  この日の17時。  オレは新宿二丁目・バケーションと言う店に初めて立つことになった。 .
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