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「君がいた年、二〇一一年から十五年後、第三次世界大戦と呼ばれる史上最大の戦争が起こった。
各国は核による攻撃を当然のように使い、そして電磁砲(レールガン)と呼ばれる新兵器までも導入した。」
「そんなすぐに……」
「この戦争が収まるのはその十年後。もうその時には人口は二十億を切っていたが……この惨劇はここで終わらなかった。」
「どういう……」
「君も見ただろ? あの魚を。」
「ええ。あのピラニアみた……」
「あれはピラニアだ。」
みたいと言っていたものがまさか本物だとは、少年は目をパチパチさせた。
「核による戦争と人間の過度ともいえるエネルギー依存が世界規模の突然変異を巻き起こしたんだ。
人間に飼育されていたような動物たちは巨大化し、逆に人間を狩りだした。」
「そんな……」
「それで俺一人だけになったのが先月だ。最後の一人が巨大化した犬にかみ殺された。」
その悲しいような悔しいような表情からその最後の一人との関係が少年にも分かった。
「恋人だったんだ。」
「ああ。」
恋人を目の前で殺されるという苦痛は少年にとって計り知れないものだった。
また先ほどよりも重い沈黙が満ちていく。
「……だけどなんで僕を呼んだんですか?」
だがこれではきりがない。
そう思い勇気を出して少年は口を開いた。
それは当然ともいえる疑問だった。
少年ははた目から見て十五、六といった具合だろう。そんな少年に語るには確かに重すぎる話である。
だが青年はゆっくり、そうじゃないんだ、と首を横に振った。
「君じゃなければならない。」
「なんで……」
「君が……君が第三次世界大戦を引き起こしたからだ。」
「えっ!?」
今度ばかりは本当に少年は驚いた。
「君が発明した、いや将来開発する衛星からの超電磁砲による攻撃。これが戦争の皮きりになったんだ。」
「そんな……」
そこまで言われてにわかに信じられなかったが、確かに少年の夢は宇宙関係の技術開発の職に就くことだった。
つまりあながちウソだとも言い切れない。
「だから、だから俺は、っ!?」
ドゴン
地震とは違う、何かが爆発したような振動が建物を揺らした。
「くそっ。ついに来たか。」
口惜しげにつぶやく青年の向こうでバキバキと床や壁が突き破られる音が徐々に近づいてきている。
「俺が君を呼んだ理由、分かってくれたか?」
「う、うん。だけど、どうすれば……」
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