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第1R
[嵐の中]
ザー…
朝から降りだした雨が夕方から激しさを増して屋根に叩きつけられている。
間もなく夏も半ばに差し掛かる頃、北の大地に珍しく台風が近づいているらしい。
ピカッ
ガラガラ…ドドドーン…
暗闇広がる窓の外、見えるのは雷の光と落ちる音
「…少しは落ち着きなさい…」
どっしりと落ち着いて座る白髪の目立つ初老の男性が見かねて声を掛ける。
声をかけられてハッとし、窓に当たる大きな粒を意味も無く確認する。少し間をあけ一呼吸して角に置いてある長椅子に腰を下ろす。
「まぁ初めての子供だし、心配するのはわかるけど…お前は何もできんのだ…」
うろたえる男性の父親らしい男性が仕方ないという手振りをする
屋根に叩きつけられた雨が滝の様な流れを作り窓の下に落ちていく。
男としてできる事。それは…ただ今は信じて祈るしかなかった。部屋の中では二人とも頑張っている。
母に為るため、そしてこの世に産まれ新しい[夢]を追いかけるために…
男は黙り手を合わせただひたすら聞こえるであろ声に耳を傾けた
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