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「あれから二年経ったけど・・・」
少しいい淀み、
視線を伏せる由希ちゃん。
伏せたまま、言葉を紡ぐ。
「・・・まだ好き?」
倉持舞香のこと、まだ好き?
由希ちゃんが言ったのは、
そういうニュアンスのこと。
二年前、いなくなった彼女のこと、まだ好きなの?――つまりもっと分かりやすく言うと。
二年前死んだ私、倉持舞香のことをまだ忘れられないのかどうか。由希ちゃんは、それを問いている。
私は、二年前に死んだんだ。
補足的に説明すれば、
私はもともと体が弱かった。
ちょっとどころの話ではなく、10歳まで生きられないと言われるまでに、病弱な体だった。
だから、私がすぐ死ぬのを、
佐藤くんは知っていた。
知りながらに、私にたくさんの愛をくれた。
私の幼なじみの
由希ちゃんもいてくれた。
幸せな人生だと、思えた。
ただひとつ。
死に際に、佐藤くんが
ずっと好きだと言ってくれたことが、凄く心残りというか、不安だった。
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