佐藤くんの恋愛事情

7/9

381人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「あれから二年経ったけど・・・」 少しいい淀み、 視線を伏せる由希ちゃん。 伏せたまま、言葉を紡ぐ。 「・・・まだ好き?」 倉持舞香のこと、まだ好き? 由希ちゃんが言ったのは、 そういうニュアンスのこと。 二年前、いなくなった彼女のこと、まだ好きなの?――つまりもっと分かりやすく言うと。 二年前死んだ私、倉持舞香のことをまだ忘れられないのかどうか。由希ちゃんは、それを問いている。 私は、二年前に死んだんだ。 補足的に説明すれば、 私はもともと体が弱かった。 ちょっとどころの話ではなく、10歳まで生きられないと言われるまでに、病弱な体だった。 だから、私がすぐ死ぬのを、 佐藤くんは知っていた。 知りながらに、私にたくさんの愛をくれた。 私の幼なじみの 由希ちゃんもいてくれた。 幸せな人生だと、思えた。 ただひとつ。 死に際に、佐藤くんが ずっと好きだと言ってくれたことが、凄く心残りというか、不安だった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

381人が本棚に入れています
本棚に追加