現実世界 1 ある日の夜

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男子は喧嘩の記憶や窃盗の記憶、挙げ句の果てにはセックスの記憶まであった。 女子は女子でいじめの記憶や引きこもりの記憶など辛い記憶ばかりが印象に残り、散々だった。 もちろん、楽しい記憶もあったが、あくまでその人にとって楽しい思い出であって私は全然面白くなかった。中学高校はそんなつまらない毎日を過ごしていた。 大学受験の時、私はこの能力を改めて考えなおしてみた。この能力を「使う」ではなく「利用する」の発想に至った。 そして私は医学部の大学に入り、精神科医を目指した。 記憶探知を使う度にその人の記憶をあさってはその人の治療方法を考え、カウンセリングを行うというやり方だった。 的確すぎるカウンセリングに驚いた担当教授は試しに当時、まだ研修医の私にぶっつけ本番のカウンセリングを行わせてみた。結果は大成功だった。 この治療を行った後、口コミで広がったらしく、私目的で長蛇の列が並んだ時もあった。 まだ二年目の新米医者なのにあゆみ病院の精神科医としてやっている理由はここにある。 今は医者をやりつつ、雑誌のコラムを書いている。タイトルは「記憶にあるカルテ」。 言葉通り、記憶にあった患者との会話、内容をつらつらと書いていく。
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