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「小癪な……しかし、抵抗があったほうが面白い」
「へへ……そうかい?こいよ……ウスノロ」
「主……死にたいのかあああああああっ!」
俺の挑発に面白いように食い付いてくる青田坊。 喧嘩の基本は相手の心を乱すこと。
つか、やってて良かったぜ……剣道。
「つぶれぇぇ……い……ぎゃあああああ」
振り上げた青田坊の両腕目掛けて火留羅を薙ぐ。 その速度は正に一閃。 秋の美しい月を背景に、青田坊の真っ赤な鮮血が吹き出し、さながら花弁が舞い踊っているように見える。
(トドメだ……焔)
「フゥゥゥ……ああ!」
深く息を吐いた俺は、左脇構えを取る。
青田坊は両腕を切断されたショックから立ち直れないのか、呆然と宙を仰いでいる。
やるんだ。
渾身の力を込めて、振り抜くんだ!
自分の力と、この火留羅を信じて。
「はああああああ!!」
「む……むね……ん」
青田坊の胴体を横一文字に切り抜ける。
抜き胴か……俺の一番得意な技だ。
斬られた青田坊は一言だけ残すと、黒い霧となって中空に消えていった。
終わったな……とりあえずは。
「は…はあはあ……ぷはっ」
(おいおい、根性ねぇなぁ……あと99匹も倒せるのかよぉ)
緊張から解き放たれた俺はその場にへたりこむ。 安堵と疲労から、額から汗が噴き出す。
そんな様子に俺の手から消えた火留羅が嘲笑を漏らす。
しょうがねぇだろ。こんな経験は初めて……てか、経験したかなかったんだからよ。
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