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初めての戦いから数日後―未明。奏風学園・中庭。
(おいこら!!もっとちゃんと構えやがれ!ヤツの動きをちゃんと見るんだよ!)
「わかってる!だから、人の頭んなかでぐちゃぐちゃ喚くなよ……っとぉ!」
風のように俺の周囲を飛んだり跳ねたりしてるこのアヤカシは『かまいたち』その名前の通りに、80㎝程の身体を栗毛色の体毛に覆われ、両腕の先端には鋭利に輝く二本の鎌。
小憎らしいくらいにすばしっこいこいつを相手にしてから、もう小一時間は経ってるんじゃないか?
相変わらず俺の鬼神剣・火留羅の深紅の刃は空を斬り続けている。
まるで桶の中のうなぎみたいにヌルヌルと宙を舞う鎌鼬に、いいかげんイライラしてくる。なんなんだ?ちゃんと動きを読んで攻撃してるのに……かば焼きにすっぞ!?ゴルァッ!
「はあはあ……くそっ……全然、当たらないじゃねぇかよ……はあ……はあ」
(落ち着け焔。ここで焦ったら勝てるものも勝てなくなる。いいか?まずはまっすぐ構えて気持ちを落ち着けろ)
……What?なんだって?
この状況下で何をどうしたら落ち着けるんだい?
もし、方法があるならおじさんに教えてごらん? さあ!さあさあさあ!
しかし、そこは他人に寛容な俺さ。ここは黙ってしたがってやりましょう…………死にたくないし。
「スゥゥゥ……ハァァ」
俺は一度大きく深呼吸すると、火留羅を身体の中心にゆっくりと構える。 そんな俺をバカにするように鎌鼬は時々、くるりと空中を旋回してはキシシ!と嫌味な笑いを向けてきやがる。
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