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「鳳?おまえは言い訳なんざしないよなぁ?」
「……はい……」
雅子さんの口の端が不気味につり上がる。
綺麗なご尊顔が台無しですよ?
ね?だから、止めません?あれ?なんで、なんで木刀を振りかぶってらっしゃるんでしょうか?
ああ……さよなら、俺の17年間。
そしてありがとう。俺の17年間。
「仕置きだ!!」
「ギャフ!!」
次に俺が目覚めたのは、自室のベッドの上だった。 本当に残念だが、蒼矢と俺は同室のルームメートってやつだ。
まだズキズキ痛む体を押さえながら、二段ベッドの下段を覗き込む。
アイツ、死んでないだろうな……。
「フゴーむにゃむにゃ、もう食えねぇよぉ……ムフフ」
「脳みそまで筋肉なのか?このアホは」
あまりの蒼矢の様子に呆れながら、再び自分のベッドに体を横たえる。
枕元の時計で確認した限りでは、今はもうすぐ夜中の2時ってとこか。
ボンヤリとそんなことを考えていると、まるで勝手に口をついたかのようにある言葉が発せられる。
それは誰かに操られていると言っても過言ではなかった。
「さあ……逢魔ヶ刻だ……」
自分でもどうしてそんなことを言っているのか、全く理解出来ずにいると、夢の中で聞いたあの声が聞こえてきた。
(さあ!行こうぜ?焔……魑魅魍魎を狩りによ……)
「おまえ……あの鬼か?」
(ああ。いつも夢の中でおまえと会っているな)
「一体何のようだ?」
(なんだ?忘れちまったか?いや、今生のおまえは知らねぇのか)
自分でも驚いた。
正直、ここまで状況把握能力が高かったとは思わなかった。
頭の中に響いてくる声と会話しているなんて、どう見てもおかしい状況だが、俺は素直にそれを受け入れていた。
言うなれば、俺がと言うよりももっとこう中の方の……そうだ。魂みたいなのがさ。まるで昔から知っているような感覚にとらわれている。
「今生?なんのことだ?」
(はははぁ~おもしれぇぜ……いいか?知りたいなら教えてやる。だが、一度知ったらおまえはもう後戻りは出来ねぇ。それでも知りてぇか?)
当たり前だ。ガキの頃から夢に出てきて、あの頃は恐くて眠れなかったんだぞ!俺の純真無垢な気持ちを返せ!
と、無駄に突っ込んでる場合じゃない。
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