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ほとんど会話らしい会話もなく、車はただ帰り道を進んでマンションへとたどり着いた。
エレベーターを降り、最初のドアが遠山奏音の部屋だが、彼は律儀にも私の部屋の前まで送ってくれた。
「じゃあおやすみ」
ただの勘でしかないけど、何か私に言いたいことがあるような気がする。
だけど彼は何も言わなかった。
少しずつ遠ざかる背中。
……何か言わなきゃ。
でも何を?
私はふと、右手に握られた紙袋の存在を思い出した。
食べそびれた最中だ。
私はそれを掲げて、思いきって声をかけた。
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