第4話

18/20
前へ
/543ページ
次へ
ほとんど会話らしい会話もなく、車はただ帰り道を進んでマンションへとたどり着いた。 エレベーターを降り、最初のドアが遠山奏音の部屋だが、彼は律儀にも私の部屋の前まで送ってくれた。 「じゃあおやすみ」 ただの勘でしかないけど、何か私に言いたいことがあるような気がする。 だけど彼は何も言わなかった。 少しずつ遠ざかる背中。 ……何か言わなきゃ。 でも何を? 私はふと、右手に握られた紙袋の存在を思い出した。 食べそびれた最中だ。 私はそれを掲げて、思いきって声をかけた。
/543ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8551人が本棚に入れています
本棚に追加