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二年前、当時ラシナムではタルジスとランティアの大規模な戦争“アラシクルメント”が勃発していた。
優勢を保ち続けていたランティアだったが、タルジスの一人の軍人。“エヴァル”が戦争に参加した瞬間から形勢が180度回転してしまった。
たくさんの死人の中に佇む黒い死神エヴァルはランティアの軍人約150人をたった一人で掃討してしまった。
一つの任務を達成したエヴァルはランティアの領土、病院跡地から城へ戦況確認のために引き返そうとしていた。
「掃討完了ですね。さて、戻りますか」
崩れ落ちた病院の瓦礫の中に何人かの人が埋もれていることを目にしながらも、エヴァルはまるで何も見ていないと言うように踵をかえした。
「?!」
ふと視界に人影をとらえてエヴァルは咄嗟に戦闘態勢をとったのだが、すぐにその手をおろした。
目の前には地面に倒れ伏した傷だらけの何も抵抗できなさそうな女。
今にも死にそうな彼女は確かにエヴァルのことを見つめているが、見えていないのか焦点が合わない。
気配で察知しているのか、エヴァルに向かって腕を伸ばしている。
「(ランティアの方ですか。この服装を見る限り医者…ですね。まだまだ未来があるというのに…)」
エヴァルは視線こそ冷たい目をしているが、内心女を放っておけないというような不思議な気持ちでいっぱいだった。
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