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『意味なんて知らなくていい、ただ見てくれればいいんだ』
急にそんな言葉が頭の中に入ってきた。耳からではない、誰かの意識が僕に直接語ってきた。
二人を見ると少女が倒れていた。穴だらけに、血まみれになって。
兵士の小銃は銃口から煙があがり、新しい血をかぶっていた。
兵士の顔には少女の返り血がついていた、そして泣いていた。声も出さずに。
兵士のその表情に僕は吐き気がした。ついさっきの命が生まれる瞬間はまだ鮮明に網膜に焼きついている。その苦労も、喜びも……。
なのに命が奪われる瞬間は……苦労も、悲しみも、何も無い。
どこからともなく花火を打ち上げる時のような音が聞こえた。そして何かが兵士の足元に落ちてきて、轟音と共にオレンジ色の閃光を放った。
目を開けると兵士の両足は無くなっていた。爆撃を受けたんだ。
彼は残った腕だけで自分の体を、自分が殺した少女のもとへ運んだ。彼が移動した地面には血の跡が残る。
彼は少女の開かれたままの瞼をそっと閉じると自分も目を閉じた。
――その目は二度と開かなかった。
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