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僕は兵士と少女の元へ向かった。向かったと言っても、また自然と体が動かされているのだが……、例え自分で体を動かせたとしても、二人の元へ歩いていっただろう。
周りの風景は止まっている。空を焦がす火柱も、視界を遮っていた火の粉も動かない。耳を塞ぎたくなるような爆音も、もう聞こえてこない。
そうだったのか、この夢はあなたが僕に見せていたんだ。
兵士に向かい、口の中で問いかけた。もちろん答えは返ってこなかった。
僕は無意識に両手のひらを合わせ目を閉じた。
きっと次に目を開ければ僕は目を覚まし、またいつもの朝になっている。
だけどこの夢は……、微笑みに見守られ生まれた瞬間も、無慈悲に命が消えていく瞬間も、世界のどこかで起きている現実なんだ。彼はそれを僕に【見てほしかった】んだ。
end
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