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血の匂いや死臭まで漂ってきた。この街は既に壊滅しているのだろう。街中から銃声や爆音が轟いている。
ふとさっきの光のことを思い出して後ろを振り向いた。
光を放っていた主は一人の兵士だった。迷彩の戦闘服やヘルメットは所々血で赤黒く染まっている。自分の血か、それとも……。
彼をよく見ないうちに、ほとんど直感でわかった。この兵士はさっき見た赤ん坊だ。
なぜ彼だとわかったのか、自分でも不思議だ。さっきの幸せの風景、家族から今の彼はとてもむすびつかない、目には狂気が宿っている。
天国と地獄……そんな言葉が頭をよぎった。
突然、後ろから子どもの泣き声が聞こえた。小さな女の子が母親……だったモノにすがりついて泣いていた。
母親はもう生きていない。誰が見てもわかる。上半身と下半身が千切れている。
そんな母親の、目を見開いたままの死体を少女は泣きながら揺さぶっていた。
足音が聞こえ後ろを振り返る。さっきの兵士が少女に気づきそれに向かいゆっくりと歩いてきた。
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