怪物投手と天才打者

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「……さぁ~? とりあえず~、自分で考えてやってみようよ~。」 真剣に話す優真とは対照的に、吉永先生は気の抜けたような返事をする その態度に優真は少し苛立ちを感じたのか、眉をひそめてムッとした表情を浮かべ、彼の横を通りすぎてグラウンドの外に出ようとした 「せ、先生~っ。荷物を放っておいたまま先に行かないで下さいよ……、って……神谷……君?」 その時、遅れてやってきた茜が優真とすれ違ったのだが、彼のいつもとは違う雰囲気に怯え、声もかけれずにその場に立ちすくんだ 「……良いのか? あんなことを言って。納得いかぬじゃろ、彼の性格では。」 異様な雰囲気に包まれているグラウンドで、その一部始終を眺めていた滋野監督が吉永先生に話しかける すると彼は、少し困ったような苦笑いを浮かべながら答えた 「……僕も、色々と助言したいんですけどね~。こればっかりは~、努力だけでなんとかなることでもないですし。それに……。」 吉永先生はそこで黙り込むと、ベンチの手前で立ち尽くす宇堂を見つめる 「……彼もまた、これでは終わらないでしょうしね~。色々、楽しみにしときますよ~。」 吉永はそう言ってにっこりと笑うと、滋野監督と共にグラウンドの外へと消えていった 「……何があったんですか?」 「……さぁ?」 とりあえず何かの話が終わったような状況に、さっきついたばかりの茜と気絶をしていた彰はきょとんとし、ただ首を傾げていた
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