1300人が本棚に入れています
本棚に追加
/880ページ
――――2002年、夏。
「はぁはぁはぁはぁ……」
それはよく晴れた日の朝、普段と変わらない静かな村の姿。
うだるような暑さが少し引き始めた夏の終わり、一人の少年が汗を撒き散らしながら走り続けていた。
少年は休むこともなく、まるで何かに取り憑かれたかのように必死の形相を見せる。
「はぁはぁはぁ……そんなはず……そんなはずは……」
舗装もされていない山道をひたすら駆け上る少年には、執念に近いものを感じざるを得ない。
少年は走りながらも、周りをキョロキョロと見渡していた。
そう、少年は探していたのだ。
『何か』あるいは
『誰か』を。
息を切らしながらも少年は、その山道の終点へと辿り着いた。
呼吸は乱れ、日焼けした顔からは、次から次へと汗が噴き出し、顎先からポタポタと滴り落ちる。
少年のお気に入りのシャツも、たくさんの汗を含み、じっとりと湿ってしまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!