早い者勝ち

6/26
前へ
/57ページ
次へ
「……麻衣、遅かったね」 下駄箱に行くと、すでにそこにいた春子が私に気が付いた。 「ん、あぁ、雅くんから連絡もらっててちょっとね」 靴を履き替えると、琳が私に抱きついてきた。 「雅くんってぇ、あのおっきい後輩くんだよねぇ?」 「……琳とは違ってね」 「こらぁ!今、琳のこと暗にちっこいって言ったでしょー!」 むぅ、と頬を膨らませて春子に怒る琳。 まーた始まっちゃったよ…… 琳と春子はいつもこんな感じだ。 どうやら春子は琳のリアクションが面白いらしく、毎日必ず一回こうして琳で遊んでいるのだ。 「ほら、春子。そこまでにして帰るよ」 私は琳に助け船を出すと、さっさと歩き始めた。 「あっ、待ってよぉ」 それを琳と春子が後ろから追ってきた。 ……もう、あの頃みたいに花いちもんめをしなくたって、三木が手を繋いでくれなくたって。 私は今を楽しく生きてる。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加