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「それにしてもいつからいたの?
……もしかして、覗き見?」
「誰がするかっ!」
うわ、やらしー。なんて発言をしてやると、三木は慌てて否定し始める。
「なんで俺がお前の行動を覗かなきゃならん!」
もっともらしい反論に私はそりゃそーだと頷いた。
それを聞いた三木は短髪のくせに髪の毛をいじりながら、私から目をそらした。
「わ、分かってくれたんならいい……」
「やだ、なに。その反応」
昔からする仕草なんだけど、知り合って13年。まったく意味を掴めないままだ。
知ろうとは思ったことがあったにはあったんだけど、今の状態ではとても――――。
「私もう行くから。じゃあね」
これ以上何を話していいのかわからず、私は強引に別れを切り出した。
「お、おう!じゃあな、伊藤」
――――伊藤。
そう呼ばれたことに胸がチクリと痛んだけど、私は何事もなかったかのようにその場を去った。
……昔は、
「麻衣ちゃん、だったのにな」
ポツリと呟き、ため息を一つついた。
手に持ったままの、潰れた紙パックの姿がよけいに私を惨めな気持ちにさせた。
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