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……すり抜けてしまった、アイツの小さな体。
力ずくでしか繋ぎ止めておけない自分。
俺はいつもアイツを泣かせてばかりだ。
誰にも奪われないと、心のどこかで安堵していた。だからこそ、焦った。
奪われることがないだろうと踏んでいたアイツはいとも簡単に奪われた。
頭を過るのは、昨日のキス。
伊藤が俺じゃない男とキスしてる、あの記憶。
「……伊藤…っ」
嫌いだ、花いちもんめなんて。
すぐにアイツを奪われてしまうから。
離さないように握ったはずの手は容易く解けてしまう。
「幼なじみじゃなくなったら、俺はどーやってお前を繋ぎとめればいいんだよ……?」
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