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それからあっという間に土曜日はきた。雅君に誘われた日。
「……だめな女」
溜め息と共にそんなことを吐き出した。そんなこと口に出さなくたって分かるのに、気付いたら声になっていた。
くるり、と髪の毛をいじりながら私は家ではないそこで、ただ時間が来るのを待っていた。
「麻衣先輩!」
しばらくして、雅君の声が聞こえてきた。少し走ったのか、うっすらと額に汗が滲んでいた。
そんなに急がなくてもいいのに。
そう思ったけれど、次の瞬間に私に向けられた笑顔にそれは言えなくなってしまった。あまりにも嬉しそうな笑顔。罪悪感をよりいっそう感じてしまう。
「……先輩?」
表情が曇っていたのか、雅君が心配そうな顔で私を見る。何でもないと笑顔をつくり、無理に雅君をそこから連れ出す。
「ちょ、せんぱっ?!」
「ほらほら行くよ、雅君!」
少しだけ、私のエゴにつきあってほしい、雅君。
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