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『まいちゃん、水ぞくかんのグループ、いっしょになろうね!』
『うん、いいよ、こうたくん!』
アイツが私を麻衣と呼んでくれた最後の年。小学校の遠足で私たちは水族館に行くことになっていた。
私はとても楽しみでお菓子なんかも内緒で規定された以上の額の量を買って、三木と分けようだなんて浮かれていた。
お弁当だって可愛くしてね、だなんてお母さんに何度も頼み込んだものだった。
初めての水族館を三木と行けることが何よりも嬉しかった。
だけど、私はあの日行けなかった。風邪を引いたのだ。
せっかく買い込んだお菓子も虚しくリュックに詰め込まれたまま。治ったあともお菓子を食べる気になれなかった。気づいたらなくなっていたから、きっとお母さんが処分したんだろう。
あの遠足は。
あの遠足は譲れなかった。
どうしても行きたかった。
小さな私の大きな決心。
……三木に、康太くんに『好き』だと言いたかった。
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