鬼ごっこ

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私はあの頃と何ら変わってやしない。 どこで何をしてても、頭のなかはいつも三木のことばかり。 今だって雅くんを目の前に失礼だって分かって、追い出そうとした矢先にこれだ。 「雅くん」 「あっ、お腹空きました?あっちに売店ありましたよ?」 「ううん、そうじゃない」 ゆっくりと唇を開く。 たくさんの感情がぶつかり合って、もう自分が何を考えているのかわからなくなりそうだ。それでも必死に言葉を頭の中で羅列させる。 雅くんの顔が強張っていくのが辛うじて視界に映る。また思考が歪みそうだ。 「私ね、今まで水族館に来たことがなかった。今日が人生で初めての水族館なの」 自らを束縛した。 あの日叶えられなかった私の決心が叶うまで、来ることをやめようと改めて決意した。 雅くんの瞳が不安げに揺れる。その中に映るのは、今にも泣き出しそうな私。 雅くんが不安の色を宿してるのは私の話のせいなのか、それとも私の表情のせいなのか。 「昔、遠足で水族館に行こうってなったんだけど、私風邪引いちゃってさ」 情けないでしょ?、と軽く笑ってみせる。泣き出しそうな私の顔が雅くんの瞳のなかで醜く歪む。 笑うのって難しいな。 「結局いけなくってね。  人生最大の決心をしてただけにそりゃもうふてくされちゃって。そのままずるずると今に至るの」 多分、人生最大の決心は何を意味するのか雅くんには理解できたのだろう。 声にならない言葉で「どうして俺とここに来たんですか」と雅くんは言った。
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