早い者勝ち

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私だってあの人たちのようになれば、もう少し三木と親密になれたかもしれないのに。 そう思いながら、チラリと教室の端に目をやった。 小柄ながらも存在感がある桜莉央(サクラ リオ)さん。髪の毛の色こそ普通ではあるけれど、ハーフのために青い瞳。日本人離れしたその容姿は綺麗ではなく、可愛いのだ。 それからその前の席にいるのが、安土麻理乃(アヅチ マリノ)さん。栗色の髪の毛をいつも巻いていて、とても綺麗な人だ。生まれは大阪らしく、口調はもちろん関西弁で性格は人情に溢れてる。 この二人は学年を問わずに大人気。その反面、黒い噂もあるんだけど、それはあくまで噂だ。 それに二人を妬む人が流した真っ赤の嘘かもしれないし。 私が憧れてる人たちだから、そんなことないって信じたいだけかもしれないけど。 私も彼女たちのように他人の目を引く存在ならば、三木は私を“伊藤”だなんて呼ばなかったかもしれない。 また手を繋いでくれたかもしれない。 ……なーんて、何夢見がちなこと思ってるんだか。
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